こんにちは、カッヅです。
皆さんは今でも何か夢があって、それに向かって努力していますでしょうか。
私は小学生の頃から環境問題に強い関心があり、環境学の研究者になることが夢だったのですが、研究者になることをやめた話をしたいと思います。
今後の生き方を悩んでいる方は何か参考になることがあるかもしれません。
大学院への進学で研究者を体験
実は私は夢を半分ぐらいは叶えたと思っています。
というのも、環境学が学べる某大学の大学院へ進学し、2年間大学院生として研究生活を送っていたからです。
大学院生というのは大学生とは異なり、受けないといけない授業はほんの少しで、2年間のほぼすべてを研究に費やします。
研究室にもよると思いますが、私が所属していた研究室では夏休みや春休みといった概念はなく、本当に2年間ずっと研究していました。
研究生活では、なかなか思うような結果を得られることができず苦しいことも多かったですが、それだけであれば研究者を目指して、さらに進学していたと思います。
研究費の獲得が大変すぎる
何かを研究しようと思ったら、あなたが思っている以上にお金がかかります。
私が所属していた研究室では、1台数千万円する分析装置が何台もありました。それらを購入するだけでもめちゃくちゃお金がかかりますが、分析装置のメンテナンスであったり、薬品などを買うのでもかなりのお金が飛んで行きます。
では、日本の研究者たちはどのようにお金を工面しているかと言うと、科研費をゲットすることで自分の研究費にあてています。
科研費についてざっくり言うと、こんな研究がしたいからお金くださいと言う申請を国に出して、その研究内容が認められれば国から研究費用がもらえるという仕組みです。
科研費は国民の税金から支払われるため、専門分野の近い複数の研究者による審査がありとても厳しいものとなっています。私の指導教官だった教授は科研費の応募の時期になると、1週間くらい自室にこもって目に大きなクマを作って死にそうな顔をしながら提出書類を書きあげていました。
本当は、国立大学の基盤的経費として毎年「運営費交付金」というものが交付されており、この交付金の中から研究費の一部も出ていました。ただ、交付金は年々縮小されており、科研費に頼らないと満足のいく(=成果が出せる)研究ができない研究室もあるといった感じです。
収入がない
研究者はとにかくお金がないです。研究費だけでなくプライベートのお金もありません。
教授や准教授になってしまえば話は別ですが、そこに行くまでの期間がとても長く、結構な期間貧乏生活を送ることになります。30歳過ぎても収入なしとか普通です。
まず、大学教授になるまでの王道のステップとしては、大学を卒業してその後大学院に2年間通い修士号を取得し、さらに3年間大学院で研究を行い博士号を取る必要があります。
博士号が取れたら、各大学で求人が出ているところに応募して、まずは助教として、研究者デビューします。その後、実績を出していって准教授や教授にステップアップしていきます。
ここで問題なのが、博士号を取るまでは私たちはただの学生ということです。学生なので給料等は全く発生せず、むしろ学費を払って研究をしている状況です。
留年することなくストレートで行けば、27歳で博士号が取れて、そこから就職活動を始めることができますが、特に博士号は3年間で取れる方が凄いと言われているくらいなので、30歳で学生と言う人も珍しくは無いです。
30歳と言うと、大学卒で就職している人であれば、そこそこ収入があってもしかしたら結婚して子供もいるかもしれません。そんな中自分はまだ学生でいると言うのは、ちょっと精神的にはキツい気もします。
ちなみに、博士号を取った後もすぐにどこかの大学に就職できるわけでは無いです。なぜなら、一般企業の採用とは違って募集枠も少ないからです。ポストが空かないと実力があっても助教になれないのです。
また、博士号を持っていても就職先の大学がないと言う人たちのことをポスドクといいます。
ポスドクの人たちは何とか今までいた研究室で研究活動させてもらい、自分の実績を作りつつもどこかの大学で助教のポストが空くのを待ち続けています。
もちろん、自分がポスドクの状態では給料は入ってきません。優秀な人がいても大学に就職できないのはかなりもったいない気がしています。
そして、運良く大学に就職が決まり助教となっても年収は平均よりはちょっと高いかなという感じです。大体400~600万円くらいみたいです。(東大の求人情報:https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/jobs/index.html)
助教の平均年齢が35~40歳なのを考えると、助教になるほどの頭の良さがあるのであれば、大企業に入って働いた方が高年収を狙えるのではないかというのが正直な感想です。
ちなみに助教は任期付の契約が多く、3~5年後にはまた就活しないといけないというパターンも多いです。
もちろん教授とかになれば年収1000万円以上も狙えますが、実績を積まないといけないのですぐにはなれないです。
頑張ってる割には研究者はマジで貧乏だと思います。
基礎研究は無駄と叩かれる
研究は大きく「基礎研究」と「応用研究」に分けることができます。
ざっくりですが、「基礎研究」は今まで誰も知らなかったことを明らかにしていくことが目的で、「応用研究」は今私たちが困っていることを解決していくことが目的となっています。
もっと嚙み砕いていうと「基礎研究」はいつか役に立ちそうなことを研究しているという感じで、「応用研究」は研究成果がすぐにでも社会の役に立って金になりそうな研究って感じです。
そうなると、私たち「基礎研究」を真剣にやっていた研究者たちは政治家や一般の人たちから「その研究何の役に立つの??」と心ない言葉を浴びせられます。
私の指導教官だった教授はかなり優秀だったので、研究成果が普通にYahooニュースとかに載ることもあったのですが、匿名のコメントで「そんな研究に私たちの税金使うな」とか「もっと役に立つことを研究しろ」とか言われるんですよね。
さすがに私もそのコメントを見てブチギレそうになりましたが、世間一般にはそういう認識なんだなと悲しくなりました。
現在世界で猛威を振るっている新型コロナウイルスのワクチンが1年足らずで開発できたのも、先人たちが薬学に関する「基礎研究」を地道にこれまで行っていたおかげです。
「基礎研究」があるからこそ「応用研究」が成り立つことを忘れている人が多すぎます。
「基礎研究」でどんなにすごい研究成果を出しても社会では役に立たない無駄なことをやっている人と思われるのだと思うと、研究のモチベーションも下がります。
もっと自分勝手に生きようと決めた
直接的であれ間接的であれ、現在も行われている研究活動は必ずいつか人類の役に立つものだと思います。それは、今まさに生きている人だけでなく、今後生まれてくる人たちにとっても役に立つものが多いと思います。
でも、私は人類みんなのために頑張るのはやめました。
私は、私自身と私の身近な人たちが幸せに生きられればいいやと思ってしまいました。
ある意味、研究費が削られているとか収入が少ないから研究者になりたくないと思ってしまうのでは、研究者に向いていないのかもしれません(笑)。
そんな感じで、研究者になるのが私の小さいころからの夢でしたが、現実を知ってしまったので夢を追いかけるのをやめたという話でした。
とりあえずしばらくはサラリーマンとして、衣食住に困らない程度に働いて生きていこうと思います。幸い私には妻もいますし、趣味も多いので生きているのは楽しいです。